ゴルフ合宿
冬になると寒い韓国からのゴルフ合宿が増えます。
先日韓国で教えていた女子プロが「急に台湾の試合に出ることになったんですが
低反発のルール適合モデルは買えますか?」とナコンナヨークから
バンコクに来る車中電話がありました。
彼女は韓国ではテーラーメイドと契約しており 「ソウルのテイラーメイドに電話して
送ってもらえば調整してあげる」というと「出発まで時間もないし
練習もしたいのでどうしても今日欲しいんです」
「じゃ タニヤプラザに行って買っておいで」ということで、彼女はディアマナR63の装着した
ドライバーを買ってショップに来ました。
振動数を計ってびっくり「221cpmじゃRより柔らかいよ、今使っているのは235cpmだから
もう少し硬くないとだめだし、こんなにふらつく様じゃ使えないよ」となりタニヤに交換に行きました。
シャフトのフレックスを計る場合、振動数計測が最も優れています。
細かく正確に測ることができ、シャフト単体でもクラブの状態でも測れるため、
製造段階と使用段階で共通性がありますし、他社製品を数値で簡単に比較できるのです。
振動数を計る時グリップを固定して、ヘッドを振り一分間の振動を測るのですが、
柔らかいシャフトはゆっくり大きく振れて数値は小さく、反対に硬いシャフトは
早く小さく振れて数値は上がります。
カーボンシャフトにはカーボンファイバー製の薄いシートを何重にも芯金に巻いて
樹脂で固めるシートラッピング製法と、 カーボンフィラメントを編みこんで樹脂で固める
ワインディング製法があります。
シートラッピング製法のシャフトが一般的に多いのですが、巻きや樹脂の状態 の影響で
シャフトを挿す向きによって硬さの違いも出ます。
シャフトを固定し振ると振動スピードが速い方向、
つまり硬い方向に引き寄せられながら振れます、
シャ フトの品質が良くないと振動は横ぶれやローリングに変わりますが、
原因は硬さの不均一です。
シャフトを挿す時、最も硬い方向をシャフトの軸線からヘッドの重心を結ぶラインに
合わせることがポイントですが、シャフトのロゴプリントが真上にくることは稀です。
この調整をスパイン・アライニング(Spine-Aligning)といいますが、
現在のシャフトは製造工程においてシャフトの肉厚、
ストレート製、正円性、硬度などにバラつきがあります。
現在のシャフト製造技術ではシャフトを完全に均等に製造する技術がありません、
シャフトのバランスを保つ表現として、 人間の身体に例えてスパイン(背骨)と呼んでいます。
シャフトによってはスパインが何ヶ所かあるものがあり、
仮組みをしてシャフトが一番安定する位置を探してから組むのです。
「ディアマナS63に交換してきました」測ってみたのですがまたローリング
仕方がないのでシャフト交換することになっtのですが
「シャフト代、賞金稼いだらもってこいよ」
「ありがとうございます」
彼女は予選会を通り、今年日本の女子ツアーに出ます。
この冬も、彼女達を連れてきているのは友人のチョー・ボンスプロです。
子供の頃のパク・セリやアメリカで5勝しているキム・ミヒョンの師匠で、
韓国内やアジアサーキットで10勝以上の戦績があり、指導者としても有名です。
韓国の強さは彼ら優れた指導者によって支えられています。
彼の真摯な取り組み方のせいでしょうが、今回は25名とまた人数が増えました。
朝ラウンド、午後練習、夜トレーニングのスケジュール。
日曜を除き毎朝7時から夜9時までゴルフ漬け、
今回はプロ野球チームのトレーナーまで連れてきていました。
12月20日から2月20日まで2ヶ月間のトレーニングですが
ゴルフを個人競技ではなく団体競技のチームのように捉え、
家族のような強い連帯感で一緒に苦しいトレーニングを乗り越えるのです。
しかしチーム内で個々の競争意識は子供の頃から相当なものです。
日本の運動会のように「おててつないでゴールイン」なんてことは
絶対にありえません、これが強さの秘訣。
「これからハワイに行きます」とキム・ミヒョンが挨拶に来ました。
「去年の成績が気に入らなくて師匠にみてもらいに来ました」
「そういえばミヒョンはもう30なんだよ」とチョープロ
「タイに来て妹たちと一緒にいたら自分のゴルフスタイルを思い出したみたい、
今年一勝したらアメリカに来てくれる約束忘れないでね」と言い残し
彼女は私の調整したクラブを持ってLPGA第一戦に旅立ちました。
タイ自由ランド 2006/2/20号に掲載