10月1日2019年
20歳の畑岡奈沙が、国内メジャー3勝目を
最年少で達成しました。
2打差の単独首位からのスタートで
1イーグル5バーディ、2ボギーの「67」でラウンドし、
2位に8打差をつける通算18アンダーと、
大会最少ストローク記録を2打更新しました。
海外メジャー「AIG全英女子オープン」を制した、
同学年の渋野日向子や、海外メジャー7勝で
元世界ランク1位のパク・インビが出場した今大会。
ただひとり4日間60台を並べ、
最後は誰も寄せ付けない圧勝でした。
黄金世代の吉本ひかる、
メジャーチャンピオンのフォン・シャンシャンとの
スタートでしたが、2mにつけたスタートの1番、
6Iで2.5mに寄せた2番と2連続バーディと、
序盤に独走態勢を築くと
「20アンダーを目指す。
スコアだけを目標にしている方が、
私は集中できるから」と、
初日からの目標に向けさらに加速します。
後半15番では、70ydの第2打を直接入れて
イーグルを奪い、笑顔で両手を突き上げました。
「ドキドキが落ち着いたのは15番。
最後も池が絡むので気は抜けなかった。
日本一を決める大会といっても過言じゃない。
たくさん良い選手がいる中で勝てたのはうれしい」と、
インタビューで答えていましたが、
畑岡は3月に開催された
「キア・クラシック」でLPGAツアー通算3勝目を
挙げた流れで、樋口久子以来42年ぶりとなる
「海外メジャー制覇」の期待を一身に背負っていたのです。
しかしそれ以来勝利に見放され、
形勢が一気に変わることになりました。
初の海外挑戦となった「全英」で優勝した渋野が、
まばゆい輝きを放つことになりました。
畑岡は米国での苦悩が脳裏に浮かび
「今年はなぜか海外メジャーだけ、
うまく調子を合わせられなかった。
前の試合でうまくいっても、
メジャーに持っていけないというのがあった。
意識しすぎたと思う」と、
結果が出せなかった「海外メジャー」を振り返っています。
渋野の優勝を素直に喜びたくても、
ゴルフプレーヤーとして常にメジャーのために
練習をしてきたはずで、同年代に先を越された
悔しさは大きかったはずです。
しかし畑岡は国内ツアーでの生涯獲得賞金額1億円に
17試合目で到達し、
宮里藍の27試合目を大幅に更新しました。
20歳245日でのメジャー3勝目は
諸見里しのぶが持つ23歳59日の記録を上回りましたが
「記録は意識していなかった。
ただ、20アンダーに届かなかった。
そこはちょっと悔しいです」と笑みを浮かべ
「海外メジャー制覇」の想いを、
さらに強くしている様でした。
次戦は優勝した17年以来となる
国内ツアー「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」に
出場しますが「先のことを考えすぎずに
1試合1試合やっていきたい。
今やっていることは先につながっていく」と、
記録的な国内メジャー制覇から、
来年の海外メジャー、
そして「東京五輪・金メダル」という
「夢」を叶えるための再スタートを、
日本から始めるということです。
畑岡は2015年から
「IMGA世界ジュニアゴルフ選手権」を2連覇
していますが、ゴルフファンを驚かせたのは
16年の国内メジャー「日本女子オープン」でした。
4打差を追う最終日に「68」をマークし
「国内メジャー史上初のアマチュア優勝」を飾ったのです。
17歳263日でのメジャー優勝は、
平瀬真由美の20歳27日
(1989年LPGAレディーボーデンカップ)を抜く
最年少記録です。
今回の2位に8打差をつけるという圧勝劇は、
セッティングを担当した岡本綾子プロの
意図を反映した内容でした。
開幕前に岡本プロは「ラフは想定より長くなったけど、
ファアウェイのコンディションが素晴らしい。
4日間を通してラフに入れない技術を持っている
選手は少ないと思います。一方でグリーンは軟らかい。
かといって、ピンを端に振るようなことは考えていません。
ショットをすれば良いラインに止まるように、
戦略的なプレーができるセッティングにする」と
語っていました。
畑岡の18アンダーに続いたのは、大西葵と
フォン・シャンシャンの10アンダーでしたが
「1日4、5アンダーを出すのはひと握り。
どれくらいの割合の選手が、
4日間そのままの数字を出すかは想定していませんが、
15アンダーを出せば独走かなと考えています」という、
岡本プロの見通しは的確でした。
「全英女子オープン」を制覇した渋野日向子の
優勝スコアは通算18アンダーでした。
スコアの伸ばし合いについていけないと
勝てないのが世界の流れです。
畑岡は最後まで目標を20アンダーに設定していましたが、
渋野の18アンダーを意識していた様にも思います。
照準を合わせていたはずの
「全英オープン」で予選落ち後、
一時帰国した畑岡は、栖原弘和トレーナーとともに
心身をチェックし、筋力低下と、
頭の中が整理しきれていないという
課題を把握したといいます。
直後から週2回のトレーニングを欠かさずに、
今大会の期間中も火曜と木曜に近所の
24時間営業のジムに通ったそうです。
畑岡の調子のバロメーターはスイング時の
左足つま先の向きということです。
良い時はやや外側に向くのですが、
背中が硬くなり上半身が旋回しにくくなると、
骨盤を回そうとして左足つま先が内側へ向くことで、
アドレス時のライン取りもずれることになります。
最終日に畑岡が背中を気にするそぶりを見せていたのは、
大会3日目にその傾向を感じとっていたからでしょう。
脳が疲れると末梢神経の情報感度が低下して、
身体の繊細さが失われるといいます。
畑岡は帰国後に長年飼っているトイプードルのステラと、
今年5月に生まれたアポロと散歩することで
リフレッシュできたということです。
高校1年でアマチュア優勝を成し遂げた勝みなみを、
渋野は当時「次元が違う」と眺めていたそうです。
今回の畑岡のプレーをレベルが違うと評した河本結や、
最終組で「80」を打って涙をこぼした吉本ひかる、
予選落ちをした原英莉花も「あの子にできるなら、
いつか私にもできる」と思っているはずです。
新記録を樹立した畑岡のプレーは、
黄金世代に新たな水準を設定したともいえます。
畑岡は日米通算7勝となりましたが、
海外メジャーはプレーオフで惜敗した
2018年「全米女子プロ」の2位が最高位です。
国内メジャー3勝目を挙げた畑岡は、
8月の海外メジャー「AIG全英女子オープン」を制した
同学年の渋野について問われ
「日向子ちゃんが全英に勝ってすごく悔しかった。
自分も頑張ろうと思った」と語っています。
畑岡は1999年1月、渋野は98年11月生まれの同学年。
二人は女子プロゴルフのいわゆる
「黄金世代」を両輪としてけん引する立場になりました。
この勝利で畑岡の世界ランキングは、
2ランク上がり7位になりました。
渋野は14位と現状では「東京オリンピック」代表は
この二人です。
メダルを獲得するには五輪コーチの仕事が重要です。
技術的な部分は各々コーチがいるので
アドバイスは不要のはずです。
必要なサポートとは、
加熱しすぎているメディアから
彼女達を守るための対策や、
ギャラリーとの距離感をどうしたらいいのかを
考えて欲しいですね。
五輪コーチになった服部プロは留学経験もあり
英語も堪能で、自身もLPGAツアーに参戦経験もあります。
国内のサポートも大事ですが、
畑岡と渋野が来年の海外メジャーに参戦する際に、
ストレス無く試合に集中できるようなサポートを
スタートして欲しいと思います。