11月15日2019年
日本初開催のPGAツアー
「ZOZOチャンピオンシップ」は、
13年ぶりの来日だったタイガー・ウッズが、
松山英樹に3打差をつけ優勝しました。
1996年「ラスベガス・インビテーショナル」での
初優勝から23年の年月を経て、
往年の名手サム・スニードと並ぶツアー
最多優勝タイの82勝目を記録しました。
ここまでの勝率は22.8%で、
鉄人を謳われたベン・ホーガンの持つ21.3%を上回り、
史上最高の勝率となっています。
タイガーは43歳になり、最近では体の衰えを
感じるということですが、S・スニードは5
2歳で自身最後の82勝目を挙げています。
S・スニードの歴代1位の記録を塗り変え、
ジャック・ニクラウスの持つメジャー18勝の更新にも
期待が持てます。
「サムの様に52歳までプレーし続けられたらいいね。
数年前に同じ質問を聞かれたら答えは違ったかもしれないけど、
未来の見通しは明るい。
彼のように40代後半~50代前半でも
安定したプレーができればいい」と抱負を語っています。
2ヶ月前に手術を受ける前は、
ヒザのせいで体の回転もままならず、
腰とお尻にも負担がかかり、
しゃがむことも出来なかったということです。
タイガーの歴史的な優勝が日本で達成されたことは、
日本のゴルフファンにも、
とても意義があることでしたが、
タイガーにとっても感慨深く、
思い出深い試合となったことでしょう。
タイガーの数々のメジャー優勝、
レギュラーツアー優勝を見てきましたが、
日本のゴルフ史上にとって歴史に残る
PGAツアー初開催の大会で、
達成された事はゴルフの神様の仕業だったかもしれません。
PGAツアーでもタイガーは別格で、
他の選手たちとは違う緊張感が漂い、
容易に何かをお願いできるタイプではないはずです。
しかし今回は日本のファンやスポンサーの意向を考慮し、
スポンサーとの記念撮影を行ったり
「キッズエスコート」をPGAツアーで初めて行うなど、
いつもとは違う対応にも気軽に応じてくれました。
タイガー自身は久しぶりの来日に合わせて、
数々のスポンサー業務をこなす1週間でもありました。
ナイキのイベントに始まり、松山、ロリー・マキロイ、
ジェイソン・デイとのスキンズゲーム、
水曜日のプロアマ戦、第1ラウンド後には
レンジでのクリニックなどなど
、いつものタイガーのルーティーンに比べると
様々な仕事が多く、試合に集中できない
可能性もあったはずです。
ヒザの手術後の復帰戦でもあり、
ヒザの調子次第では棄権もありえたのですが、
終わってみれば完全優勝。
タイガーと松山の優勝争いという絵に描いたような展開で、
大いに盛り上がった大会でした。
無観客試合となった土曜日は、
諦めきれないギャラリーが
フェンスの前に大勢集まったということです。
運営サイドのPGAの手腕の素晴らしさも
大会を盛り上げました。
大雨で第2ラウンドが順延となり、
10番のパー4はティイングエリアの位置を
大幅に変えざるを得ないといった
予想外の事態となりましたが、
柔軟にスケジュールを変更し、
選手の負担にならないように72ホールを消化しました。
「72ホールをやりきる」という姿勢が
トーナメントを運営する上で、
重要だという意識の高さは素晴らしいと思います。
日本のツアーでは、競技短縮か中止という選択肢が
濃厚となっていたと思います。
国内ツアーでは、
JGTO主催大会(日本ゴルフツアー選手権)など以外、
JGTOだけの判断では決められない要素が多いのです。
開催コース、大会スポンサーや
テレビ放送局との利害関係もあり、
JGTOだけの独断で決めきれないのが現状です。
第3ラウンドのスタートを、
日の出30分後という判断に踏みきったり、
月曜日のプレーを午前中に終わらせたのは、
次戦の中国「WGC HSBCチャンピオンズ」に
向かう選手を配慮した英断でしたが、
72ホールを選手たちに強いるだけではなく、
選手の立場も考え、コースの状況から最善の選択をする。
さらにギャラリーと選手にとっても
ウィンウィンでいられる運営を、
PGAが目指していることは驚きでした。
世界のメディアが日本のギャラリーと
コース対応の素晴らしさを賞賛してくれたのも嬉しいことです。
来年の「ZOZOチャンピオンシップ」は、
タイガーがディフェンディングチャンピオンとして、
すでに参戦を表明しています。
戦いを見届け、帰路につくギャラリーの手には
「82」という数字が書かれた赤い缶バッジが
プレゼントされました。
サム・スニードのツアー最多勝利記録に並んだ
タイガーの82勝を記念し、
PGAツアーがあらかじめ用意していた記念品で、
その瞬間を見届けたギャラリーに配布されたことも、
大きなサプライズでした。
国内男子「マイナビABCチャンピオンシップ」と、
同じ週に開催されるゴルフ世界選手権
「WGC・ HSBCチャンピオンズ」ですが、
2年連続の賞金王を狙う今平周吾は、
賞金ランク上位2人の出場資格を放棄し、
昨年に続いて「マイナビABC」に出場しました。
その理由は「HSBC」の獲得賞金が、
日本の賞金レースに加算されないことにあります。
初出場した堀川未来夢は「今になって、今平が
日本ツアーを優先する意味がちょっと分かった気がする。
加算されないし、こっちでプレーしていても、
日本ツアーが気になっている自分がいる」と、
語っています。
堀川はビザを取って開幕2日前の午後になんとか中国入りし、
事前ラウンドなしのぶっつけ本番で臨んだのですが
結局49位タイに終わっています。
年間4試合の「WGCシリーズ」ですが、
2010年に日本ツアーの賞金加算大会から除外されています。
国内大会のスポンサーへの配慮とともに、
予選落ちのない4日間大会で設定された
賞金額が高すぎるということでした。
マイナビABCの優勝賞金はが3000万円、
HSBCは170万ドル(約1億8394万円)のため、
1試合で賞金レースのバランスを崩しかねないという
懸念からなのですが、今季からは日米ツアー共催の
「ZOZOチャンピオンシップ」が始まり、
獲得賞金の半額が国内のランキングに
反映させることが決まりました。
4大メジャーは100%を加算、ZOZOは50%、
WGCは0%という規定は、選手にとっても
理解しにくい規定となってしまいました。
「賞金王」タイトルのご褒美「5年間の長期シード」は
将来の海外進出において大きな意味を持ちます。
翌年の「全英オープン」出場も確定し
「マスターズ」からも招待の可能性が高まります。
マイナビで優勝は逃したものの、
2位に入り賞金ランクトップに躍り出た今
平の戦略も理解できますが、
世界に対して消極的と感じるファンもいるのも事実です。
WGCを優先したチャン・キムや石川遼、
浅地洋佑らは逆に日本ツアーを
軽視しているわけではありませんが、
日本ツアーの目指すべき方向性が不明瞭なのが問題です。
ゴルフ以外のプロスポーツを眺めても、
国内だけでの活躍では、ファンを納得させることが
できない時代が来ています。
JGTOが掲げる基本理念には
「世界が認める技量を備えたツアープレーヤーが、
そのプレーと人間性によって、世界の人々を魅了し、
スポーツによる国際交流の担い手になります。
次世代を担う子供たちに世界への道を拓きます」と
なっています。
世界とリンクするチャンスをJGTOが制限することは、
その理念に反し時代遅れだと
いわれても仕方のないことだと思います。