「無」の境地
心の平静さ「大河の流れ」のような静けさが、ショットとプレーの安定を生み出します。
心が乱れ「波立つ」とスイングやプレーリズムまでも乱れます。
逆に心の平静があれば、どんなピンチになっても自信を持つことができるものです。
常に心の平静さを持ち続けること、それができればどんなにプレッシャーがかかっても、
イメージとルーティーンに意識を集中して、情報に惑わされることなくプ レーできます。
ゴルフに必要な心の強さは即ち「心の平静さ」です。
どんな場面でも平常心を持ってプレーすること、ナイスショット後でも、
ミスショット後でも同じ気持ちでショットに臨むこと、
どんな局面でもやるべきことはただひとつ、
淡々と同じことを繰り返すことなのですが、
感情の動物である人間には、これを平然とやってのけるのは意外と難しいことです。
プロゴルファーならばマスターズの檜舞台でも、
普段の練習ラウンドでも、ショットに臨む気持ちを変えてはいけないと教えてきました。
状況を意識したとたん脳には余分な仕事を始めます。
もっとも人間らしい部分を司る左脳が働き出して、肝心のプレーを司る
右脳のイメージ機能に雑音が入り、プレーの精度が低下するのです。
自分の心の状態をいつも最高のレベルにしておくには「無」の境地になること。
それには左脳の動きを止めて、思考をシャットアウトすることです。
「これから打つボールの弾道を頭の中でイメージする」
「視点をどこかに固定する」等、これらの作業をしている限り左脳は働きません。
この一瞬の間に作り出された「無」の境地のあいだにショットを始めることが
ナイスショットの秘訣です。
ミスショットの後がっかりし、ナイスショットのあと大喜びする。
人間としてはそれが自然の反応で練習中なら良いでしょう、
しかしプレーの達人をめざすならこれでは落第です。
最後まで安定した心の持ち方で粘り強く決してあきらめないこと、
どんな状況でも集中を切らさずに淡々とプレーする、
これが上質な能力と なりあなたの上達の手助けをしてくれるでしょう。
すべてのショットを同じ気持ちで淡々と実行するための心構えを
「平常心」というのだと思います。
日本では宮里が負けて泣いた事が話題になった試合で、
キム・ミヒョンが約束を果たし優勝しました。
2月20日のコラムに書きましたがシーズンオフに2ヶ月間こちらに来ていたのですが
すでに5勝を上げアメリカでもスター選手ですが、3年間勝ち星がなく
自分の原点を思い出しに来たのではないかと感じました。
子供の頃から20年以上指導を受けている師匠と、
その師匠の下で彼女を目標に鍛錬を繰り返している25人の後輩との
2ヶ月間のゴルフオンリーの生活で「大事な事を思い出しました、
今年は勝てそうな気がします」と言ってハワイに旅立っていったのです。
私が思うには155cmと小さな体で飛距離が出るほうではな く、
自分の技量の範囲で持てる力を最大限に引き出し戦うための
心の持ち方を思い出し、心を鍛錬することの重要性に
あらためて気づいたのではないかと思います。
ゴルフがストロークプレーになってから、多くのゴルファーが
スコアを意識しながらプレーするようになりました。
「最後の3ホールが無かったら」
「最終ホー ルまでベストスコアで来ていたのに」・・・
よく聞く話ですが、しかしゴルフの原点はマッチプレーです。
少なくとも精神状態だけはマッチプレーを戦う心構えが大切 なのです。
ホール毎の自分の目標スコアと勝負を競うのであれば
大たたきをしてもダメージはそのホールだけ、
そこでゲームは完結していることになります。
ティーアップしてからカップインするまで、すべてのショットを
同じ気持ちで淡々と実行した結果が、スコアとなって数字で表されるだけなのです。
どこかの段階で 「思考の甘い囁き」に耳を傾けてしまった時
「大たたき」となりますが、目標のスコアとの比較は
スコアカードに数字を書いた段階で終わりにしなければいけません。
大たたき時の「異常心理」を「平常心理」にリセットして、
次のホールでは新たなゲームを始める、
決して次のホールで取り返そうと思わない、
1ホール単位で 区切りをつける習慣が、
良い精神状態を維持させてくれます。
毎ホール完結型の心構えでプレーすれば
1ラウンドで18回のゲームにチャレンジすることになります。
スコアの足し算は18回のゲーム終了後にすることです。
メンタルリハーサル
ルーティーンワークの中で、メンタルリハーサルは非常に重要な部分です。
ショット前、これから起こることのイメージを描く動作を大切にしなくてはいけません。
ミスショットはあなた自身のスイングの問題よりも、
ショット前のイ メージの描き方の不十分さが引き起こすものなのです。
良いイメージと、悪いイメージが頭の中を交錯したまま
集中を欠いた状態でスイングを始動すると、悪い予測が当たるものです。
数秒後これから起こることを心のスクリーンに鮮明に映し出す、
たとえばボールが打ち出されピンに向かって、
理想の高さで飛んでいく映像を思い浮かべることなど、
メンタルリハーサルといわれるこの準備動作は、ボールを打つ作業より大切です。
最初は明確なイメージを描くことは難しく、結果も 伴ってこないでしょう。
でも、描くフリをすることから始めてください、そうすれば良いイメージが
貴方の頭の中に自然に浮かび上がってきて、
飛んでいくボールの弾道を風景の中に描けるようになります。
飛んでいくボールの弾道とその結果を導き出すための
自分のスイングイメージを心のスクリーンに描くことは、
練習場でボールを打つことと同じくらい効果があります。
『イメージラウンド』というトレーニングがあります。
イメージの中でコースを回るのですが、
いやな場所にボールを打ち込まないように入念にチェックしな がら、
1番ホールから18番ホールまでを15分から30分かけてラウンドします。
また反対に、以前に失敗の経験のある場所や、
難しい場所から見事に脱出するショットを打つこともイメージしておきましょう。
人間は予想外のことが起るとパニックになり冷静さを欠くものです、
イメージラウンドでトラブルに対処しておけば
「想定の範疇」の出来事になり冷静に対処できます。
ゴルフは経験のスポーツですが、失敗したり
成功したりした経験の蓄積を糧に上達していくものです。
しかしパッティングの場合、特に入れなくてはいけない
ショートパットは気持ちが守りに入ると「ああやって外した」と
ミスした記憶ばかりが蓄積され、やってはいけないことを考えすぎ
手が動かなくなるものです。
そのためプロゴルファーは一定の年齢になると極端にパットがヘタになり、
ひどいとイップスになるのです。
しかし悪いイメージの蓄積がなくアメリカのシニアでも活躍しているプロがいます。
青木功プロは「今までパットをミスしたことは一度もない」と
思っているのではないでしょうか?もちろんスリーパットしたことも
短いパットを外したこともあるのですが、それは自分のせいだとは思わず、
もちろん打ち方が悪かったとは絶対に考えないのです。
青木プロがパットを外すとラインをじっと眺めます
「入らなかったのは原因があってそれさえなければ絶対に入っていた」と
他の原因を探し、自身で確認しているのです。
「オレはうまい、外れたのは打ち方のせいではない」
これがイップスにならないためのプラス思考の自信の持ち方です。
ラウンド中の素振りは、これから自分が実際にスイングする動作のリハーサルです。
なんとなく素振りをして打つ時は全力という方が多いようですが、
普段から 素振りで作ったスイングイメージと実際のスイングを
重ね合わせることができるよう練習することです。
そうするとミスの後、いやな気分になった時、
素振りをすることで悪いイメージを頭の中から追い払い、
良いイメージを思い出して気持ちも体もリセットすることができるようになります。
気分良く、良いイメージだ けを描いてプレーする習慣を身につけることができれば
ゴルフは楽しく、驚くほど上達します。
イメージの強力な力を信じましょう。
何度かイメージの選択が間違っていても、けっしてあきらめないでください。
描き方がまちがっていただけで、やりかたは間違っているわけではありません。
いくつかのイメージが膨らんで迷った時は
最初に浮かんできたイメージを信じることです、
いろいろと思案したイメージをもとにプレーすると失敗します。
プレー中の思考は邪魔となることが多く、
論理的な思考をすればするほど迷路に入り込みます。
最初に浮かび上がった単純なイメージを信じて、
その通り作業すること、そして同じ作業の繰り返しをすることが
イメージ通りショットできたという喜びにつながります。
ゴルフにミスは付き物です、ミスショット後の悪い気分に支配されず、
心と体を良いイメージにリセットする方法を知っておくことがポイントです。