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打ちっぱなし(内輪話)

スーパールーキー登場 5月15日号

国内男子ツアー第2戦「つるやオープン」最終日の結末は、

ゴルフファンを大いに喜ばせる結果になりました。

優勝した松山英樹は、ギャラリーを魅了する終盤の4連続バーディでデービッド・オーを突き放し、

プロ転向後の初勝利を史上最短2試合目で達成して見せたのです。

「目標はないですね。とりあえず1戦1戦、1打1打やっていけば、結果もついてくるのかなって」と、

優勝会見で今後の目標を聞かれても「不動心」で臨む姿勢を強調し、

胸に秘めた大きな野望を語ることはありませんでした。

“20歳でマスターズ優勝”という目標を掲げ、優等生的なコメントでメディアやファンの心を、

わしづかみにした石川とは対照的なキャラクターといえそうです。

 

松山は明徳義塾高校3年生の時に「日本ジュニア」を制したのをはじめ、

数々のタイトルをその手中に収めています。

2010年10月には「アジアアマチュア選手」を制し、初の「マスターズ」出場を決めると、

翌週の「日本オープン」では、一時は首位に1打差に迫る3位タイでローアマチュアを獲得し、

石川のライバルとして注目を集める存在になりました。

初舞台となった「マスターズ」では、日本人史上初のローアマチュアを獲得し、

ディフェンディングチャンピオンとして迎えた10月の「アジアアマチュア選手権」では

「マスターズのために勝ちに行く」との優勝宣言を見事に成し遂げ、大会2連覇を飾りました。

さらに11月には国内ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」で

史上3人目のアマチュア優勝という快挙を成し遂げています。

ゾーンにはいると“神懸かっている”印象を与える石川に対し

“勝負強さ”を前面に打ち出した松山のプレースタイルには、大きな可能性を感じます。

 

プロ転向時のインタビューでは「メジャーで勝ちたい、

世界ランキングを50位以内に上げたい」ということでしたが、

それはやはり出場を逃し涙した今年の「マスターズ」のを意識しているからに違いありません。

松山は既に今年の「全英オープン」の出場権を世界ランキングで掴んでいます。

今後は「全米オープン」の予選会にも出場し、全英以降の国内男子ツアーの空き週には、

海外ツアーに参戦する計画もあるということです。

松山の初優勝が話題になった「ツルヤオープン」ですが、

ジャンボこと尾崎将司プロが初日に見せた1イーグル9バーディ・2ボギーの「62」は、

自身の年齢「66」を上回る「エージシュート」のパフォーマンスでした。

レギュラーツアーでは初めての達成で、多くのゴルファーに感動を与えましたが、

昨年22試合に出場して1試合も予選通過を果たせなかったジャンボは、

どんな気持ちでシーズンオフを過ごし、そして今年の開幕を迎えたのでしょうか。

本人は「1日中、ゴルフのことしかやっていない」と語りますが、

66歳にして常に飛距離を伸ばすことに試行錯誤を重ねているそうです。

持病を抱え、歳を重ねるとともに衰えゆく体は、ジャンボにはいたたまれなく辛いはずです。

「健全なる精神は健全なる肉体に宿る。不健全な肉体は……、トラブルだらけだ」と

ジャンボはぼやいていましたが、その精神はやはり強靱なものでした。

 

長嶋茂雄と松井秀喜が受賞した「国民栄誉賞」表彰式が、

東京ドームで行われました。表彰式後の始球式で打つ気満々の長嶋さんは、

松井さんの投球を左手だけで振り抜き野球ファンの度肝を抜きました。

結果は空振りとなりましたが、力強いスイングにファンからは大きな拍手が上がりました。

ミスターのリハビリを担当している医師は「監督は自分に妥協しなかった。

志が違う。一日1ミリでも動かそうと…。監督の姿には日々感動させられています。

本当に頭が下がる思いです」と語っています。ミスターが病に倒れたのは04年3月4日。

その5日後にはリハビリをスタートさせたといいますが、

いまだに麻痺が残っているのは右半身と言語です。

 

緊急入院からわずか40日で退院し、都内のリハビリテーション施設へ入所すると、

施設内の廊下で本格的な歩行訓練を始めたのですが担当医は「入所したその日からですよ。

泣いてやめてしまう人もいるようなリハビリを黙々とやってきた。

今まで監督の弱音を聞いたことは一度もありません」と、

ミスターの並々ならぬ努力を語っています。

ミスターにとってはリハビリではなく復活のための「トレーニング」という強い想いがあるようです。

ここまで回復したのがすでに奇跡ですが、ミスターは満足などしていない様子で

「あと1年あったら、ちゃんと打てた」と悔しがっていたということです。

松井が投じた1球は手元が狂った暴投かと思いましたが

「ミスターから、打たないといけないと練習をさせられた」という、

内角高めにわざと投げたということでした。

素晴らしい師弟関係に感動した方も多かったはずです。

始球式後にグラウンドを後にする際、前を歩くミスターが立ち止まって手を振ると

松井も立ち止まり、決して距離を詰めなかった行動は、

師を尊敬し礼儀を失わないという「三尺下がって師の影を踏まず」を、

久しぶりに見させてもらった思いがしました。

 

ミスターを敬愛するジャンボも同じ想いで「レギュラーツアー」にこだわり

「トレーニング」を重ねているのでしょう。

松山が優勝インタビューを受けている18番グリーンに、

大会の特別な計らいで「エージシュート&ベストスコア賞」を

贈られることになったジャンボが同席していました。

インタビューを終え、表彰式に向かう松山を捕まえたジャンボは、

肩を抱いて「良いプレーだったな。ナイスプレー!」と声をかけたといいます。

ジャンボから松山への世代交代を象徴するようなシーンでしたが、

ジャンボの想いはそんなに甘いものではないようです。

最終日のホールアウト後、ジャンボを囲んでいた記者が「この調子なら、

もう一花咲かせられるんじゃないですか?」と声をかけると

「なに、もう一花?」と、ジャンボはしばらくの間、

まじまじと質問した記者をにらみ返したといいます。

きっと「ふざけるな、一花どころかもっと大きなものを狙っているんだ、

お前に何が判るんだ」と言いたかったのではないでしょうか。

 

ジャンボがエージシュートを達成した翌日、その感想を問われた松山は

「何を語れば良いんですか?」と戸惑いを見せたといいます。

ショートパットに苦しんだ3日目のラウンドの後で「外したんだからしょうがない」と答え、

それ以上質問がないとみると席を立ち、すぐにパッティンググリーンで

1メートルのパットを打ち始めたといいます。

石川と同じ様に夢や目標はもちろんあるはずですが、

それには触れず「今、何をやらなくてはいけないか」を常に考えている松山には、

石川の様な優等生的なコメントは期待しない方が良さそうです。

10位と上々のデビュー戦となった「東建ホームメイトカップ」では

ドライバーが左右に大きく曲がり、打った瞬間に両手を離すシーンも何度かあり

「変なショットを打ちまくって恥ずかしい。これからはプロみたいなショット打ちたい」と、

松山には珍しい報道陣の笑いを誘うコメントもあった様ですが、

同い年の石川が不在の中、松山には大会数が減少傾向にある

日本男子ゴルフ界の救世主として期待が集まっています。

そんな重圧もどこ吹く風で、ショットが荒れても堪え忍び、

順位の上下動は激しくとも少ないチャンスを確実にものにしていくという、

松山のプレースタイルがデビュー戦から光り輝いていました。

 

松山は「遼より先にメジャーを勝ちたい。4大メジャーなら何でもいい。

まずは出場権を得るためにも、国内で実績を残し

、世界ランキングを上げていきたい」と公言していましたが、

迎えた第3戦は難関の和合で開催された「中日クラウンズ」でした。

経験があっても上位に残るのは難しい大会ですが、

3日目の前半までは松山の独壇場でした。

ルーキーとしては初の2週連続優勝に期待が高まりましたが、

5番パー4では、フェアウェイからの2打目を直接入れてのイーグル。

9番もバーディとして前半を「31」とし、通算5アンダーの独走で後半へ折り返したのです。

しかし後半は一転して崩れる展開になりました。

14番ではティショットをOBとしてのダブルボギー。

さらに15番からは4連続ボギーを喫する急落で「42」を叩き3位タイに後退してしたのです。

 

2打差で首位片山を追う最終日は3番、7番でバーディを奪う猛追を見せ、

後半も12番でバーディを先行させ、一事はトップに立つ松村に追いつきますが、

その後は一進一退の攻防となりました。

15番パー5の2打目ではピンまで280ヤードのセカンドを、

ユーティリティでグリーン手前まで運ぶスーパーショットを披露したのですが、

もし最後の転がりで2オンしていたら展開変わっていたはずです。

右にはねて砂の入ったラフに止まった後の松山のアプローチは、

ファーストバウンドがエッジの傾斜で止まってしまい、バーディが奪えませんでした。

名物ホール16番の短いパー4では、4日間で初めてドライバーを握り

「グリーン周りのバンカーならどこでもいい」と勝負に出て、

その言葉通りグリーン右手前のバンカーに入れると、

そこからワンピンに寄せバーディを奪取ともう一度大きな流れを引き寄せたかに見えました。

しかし17番パー3でピン奥からの、さわっただけのバーディパットが止まらず、

そこから82ホールぶりの3パットとボギーを叩いてしまします。

しかしこれにも心を折られることなく、最終18番では会心のドライバーショットを放ちます。

攻めたセカンドはナイスショットに見えましたが、硬いグリーンでスピンがかからず、

ピン奥約8メートルまで転がってしまいました。しかし下りの蛇行するラインを読みきり、

最後の1コロがりでねじ込みバーディを奪取し、ギャラリーの大歓声を浴びていました。

プレーオフになった場合に備え、練習グリーンで松村のホールアウトを待ちましたが、

松村が奥からのアプローチをきっちりパーで収め単独2位で競技を終えました。

2位という結果には「チャンスがあったのに勝てなかったのは悔しいです」と語りましたが、

3日目にスコアを崩したインコースで、攻め方を変えて

1つスコアを伸ばすことができたことは収穫でした。

3日目を終えて「実績のある片山プロとの優勝争いですが?」という問いに

「関係ありません」と毅然と答えていた態度に逞しさを感じましたが、

ショットやパットがまだまだ不安定な状態でも毎週の優勝争いです。

気持ちが入りすぎるのか、大きく曲がるときはインパクトが強すぎていますが、

気持の抑えが利きだした時には、手のつけられないような勝ち方を見せてくれそうな気がします。

 

優勝した松村は、2番のパー5で第2打をグリーン右手前のラフまで運び

2連続バーディと早々に片山を捕えました。

5番では9メートルを沈め、7番のパー3ではティショットをピンそば80センチに付け、

アウトで4バーディを奪取とリードを持って折り返したのですが、

11番でバンカーショットをミスし、さらに3パットと痛恨のダブルボギーを叩き

一気に混戦模様となったのです。

勝利をたぐり寄せたのは16番でした。

ボギーでも仕方がないと思える、下りの難しい7メートルのパーパットを

「寄せに行くと3パットになる」と強気に沈め踏みとどまります。

17番では松山が外した位置からパーパットを沈め、

最終18番ではグリーン奥からアプローチを寄せ、

迫りくるスーパールーキーを振り切り3シーズンぶりとなるツアー3勝目を挙げました。

このコラムやブログで松村の飛躍を予想した昨年までの2年間は未勝利でしたが、

結婚して望んだ今シーズンは良いシーズンになりそうです。

「タイランドオープン」では、予選落ちしたにもかかわらず、

奥さんをクラブハウスに残し練習をしていた姿には好感が持てました。

また、オフシーズンをバンコクで合宿していた山下の粘り強いゴルフは、初優勝を予感させます。

 

PGAツアー「ウェルスファーゴ選手権」を制したのは、

デレック・アーンストでしたが世界ランク1207位の無名のルーキーでした。

昨年、プロ転向したばかりの22歳のD・アーンストはPGAツアーには

昨秋のフォールシリーズ「フライズ・ドットコム・オープン」に推薦出場したことがあるだけでした。

ルーキーとして正式デビューした今季は今大会が8試合目。

予選通過を果たして決勝進出できたのは、これがわずか3試合目というプレーヤーでした。

冷たい風雨に見舞われた悪コンディションの最終日を「70」で回って追い上げ、

デビッド・リンとのプレーオフを1ホール目で制して、堂々の初優勝を果たしたのです。

名門のUNLV(ネバダ・ラスベガス大学)ゴルフ部で腕を磨き、

厳しいQスクールを勝ち抜いての勝利でした。

PGAツアーは大幅なシステム変更を行ない、登竜門だった従来のQスクールを廃止しました。

昨秋のQスクールは「一発勝負」で米ツアーへ行く最後のチャンスだったともいえるのですが、

D・アーンストはたった一度きりしかないそのチャンスを見事に活かしたプレーヤーです。

Qスクールは最終ステージの6日間だけでも長丁場なのですが、

D・アーンストはプレ予選から最終ステージまでの厳しい4段階を

すべて勝ち進んで米ツアーに辿り着いています。

4段階をすべて通過した選手は、昨年はわずか4人。

そのうちの1人がD・アーンストでした。

出場権がなかったD・アーンストが「ウェルズファーゴ選手権」への招待の電話を受け取った時、

Web.comツアー参戦のためにジョージア州アセンズに向かって、

レンタカーの運転している最中で、ますチャンスはないと思われた

補欠4位からの繰り上がり出場でしたが、P・ミケルソンやL・ウェストウッドという

強豪との戦いを制し、2年間のPGAツアー出場権を手にしました。

石川は最終日を「74」でラウンドし50位と順位を落としましたが

「初日2日目はあまり良くなかったんですけど、

それでもなんとか予選突破できたというのは非常に大きい経験になった」と、

滑り込みながら「マスターズ」以降、決勝ラウンドに進出していることは、

優勝争いに参加する準備を積み重ねているといえるでしょう。

日本にはない、難しいコースセッティングに苦しみながらも「コースが相手」と向き合い、

調整に調整を重ねながら連戦に臨んでいます。

「今の自分に足りないものがこっちだとすごく良く分かる」と言うように

「環境が人を育てる」ということを実感しているのではないでしょうか。

「今のところは挑んで失敗ということのほうが多いかもしれないけど、

成功した時はそれが自分の成功体験として強く残るし、

“ここでこういうショットが出来るようになったんだな”という自信が

良い方向へ導いてくれることに期待したい」と、自己分析しています。

松山の活躍については「英樹は友達なので、純粋にうれしいですね」と

喜びを口にする一方で「いつかこっちの試合に出るチャンスがあればぜひ来てほしい。

どこの舞台でもいいので優勝争いしたいですね、いっしょに」と、

大きな刺激を受けているようで、残りのシーズンでの活躍に期待が持てます。

 

 

2013マスターズ

2013年のメジャー初戦「マスターズ」の最終日は、

ラウンドを通して雨天の中で息詰まる接戦が続く中、

アダム・スコットとアンヘル・カブレラが通算9アンダーと首位に並んでホールアウト。

決着は、2人によるサドンデスのプレーオフへと持ち込まれました。

1ホール目の18番はともにグリーン手前に外しA・カブレラのアプローチは

カップの横をわずかにすり抜け30センチに寄せ、

A・スコットのアプローチは1mショートしましたがともにパーでした。

続く10番で行われた2ホール目は、ともにパーオンに成功すると、

先に7メートルをまたしてもカップをかすめ外したA・カブレラに対し、

A・スコットがピン右につけた5メートルを沈めて決着。

77回目の開催にして、オーストラリア人として初めて「マスターズ」を制したのですが、

グレッグ・ノーマンら母国の偉大な先達たちが成し遂げられなかった大願を

A・スコットが果たしたのです。

 

通算7アンダーの単独3位にジェイソン・デイ、

4位タイにはマーク・レイシュマンのオーストラリア勢と、

メジャーを制して「完全復活」とはならなかったタイガーが並び、

首位タイスタートのブラント・スネデカーは3つ落とし、6位タイに終わりました。

13番からの3連続バーディで抜け出したJ・デイは16・17番の連続ボギーで脱落しましたが、

メジャーチャンプへのチャンスが近いうちに訪れそうです。

 

昨年7月の「全英オープン」最終日の最終ホールのグリーン上で、

膝から崩れ落ちたのがアダム・スコットでした。

サンデーバックナインの上がり、単独首位から悪夢の4連続ボギーフィニッシュで、

アーニー・エルスにクラレット・ジャグを献上してしまったのです。

あれから9か月後のメジャー「マスターズ」での雪辱でしたが、

A・スコットは最終日、6アンダーの6位タイからスタートでした。

出だしの1番でボギーを叩いたのですが、2番以降は一度もスコアを落とすことなく

「メジャー初制覇」を成し遂げました。

名選手の多いオーストラリア勢ですが、何故か「マスターズ」だけは勝利に届かず、

ことごとく涙を呑んでいました。

なかでもグレッグ・ノーマンは、ニック・ファルドに敗れた96年大会を含め

3度も2位に終わっています。

A・スコットも2011年大会でジェイソン・デイと並び2位タイとなったひとりでした。

 

A・スコットは「オーストラリアはスポーツが盛んな国。

でもこれは、我々が手にできかなった一つだった」と

グリーンジャケットを誇らしげにまとい「国中のゴルファーに影響を与えた男、

それがグレッグ・ノーマンだった。彼は僕やオーストラリアの若い選手たちにとって、

本当に大きな存在。この一部は間違いなく彼のものだよ」と、

母国の偉大な先輩に感謝していました。

 

A・スコットはデビュー当時からタイガーにスイングが似ていることから

“ホワイトタイガー”と呼ばれて注目を集めました。

ところが、突如不調に見舞われ2009年には18試合中10試合で予選落ちを喫するなど

、苦しい時期を味わったことがありました。

そんな時A・スコットに復活のきっかけを与えたのがグレッグ・ノーマンでした。

G・ノーマンはその年の「プレジデンツカップ」に、キャプテン推薦で不調のA・スコットを選出。

A・スコットは「その時ワールドクラスの中に置いてもらえたことで、

トップに立つ自信を取り戻すことができた。

そのおかげでこのマスターズに勝つことができたんだ」と復調のきっかけを与えてくれた

G・ノーマンに感謝の言葉を口にしましたが、もう一人のキャプテン推薦は石川でした。

A・スコットにとってG・ノーマンは特別な存在で、世界ランキング1位に君臨する

地元の英雄は幼少時からの憧れの存在だったといいます。

1996年の「マスターズ」ノーマンが最終日に大崩れをしてニック・ファルドに敗れ、

グリーンジャケットを逃すのをテレビで見ていたときは、

悔しさのあまり学校にも行かず涙したといいます。

「いつかは自分がマスターズで優勝したい」と、G・ノーマンが手にすることが出来なかった

グリーンジャケットへの憧れを強く持ち、プロ入り前から心に秘め続けてきた想いが、

この日雨のプレーオフでついに結実したのです。

G・ノーマンの代わりに母国オーストラリアにグリーンジャケットをもたらした

A・スコットは、もはや“ホワイトタイガー”ではなく、憧れの“ネクストノーマン”となりましたが、

勝負を決めたプレーオフ2ホール目のパットを決めたのは

トレードマークとなった長尺パターでした。

スコットが長尺パターを使い始めたのは2年前。

パッティングに悩んだ際に練習用に使っていた長尺を、

コーチから「試合でも使ってみては」と提案されて使い始めたのがきっかけでした。

その年の「マスターズ」では2位タイに入るなど、そこから成績も急浮上したのですが、

長尺パターで初めて「マスターズ」を制したプレイヤーとして名前を刻むこととなりました。

このコラムで何度も述べてきていますが、長尺、中尺パターによる

「アンカリング禁止問題」が浮上しています。

これは、クラブを体に直接または間接的に固定してストロークすることを

2016年から禁止することを、R&AとUSGAが発表したもので、

今回のA・スコットの打ち方も禁止事項に含まれます。

PGAツアーはツアーとしてアンカリング禁止に反対の姿勢をしめしていますが、

今大会も多くのプレーヤーが、以前と変わらぬ「アンカリングスタイル」で出場していました。

この問題についてA・スコットは「これからどうなるかわからないし、

その決定がどんな影響を与えるかもわからない。でも、これでビッグトーナメントを勝ってきたし、

みんな数千時間もこれで練習をしてきたんだ。今はまだ変えることはない」とコメントし、

現状を維持したまま静観する模様です。「マスターズ」チャンピオンに加え、

ローアマを獲得した14歳のグァン・ティンランも中尺パターを使っていましたが、

道具の進化とともに「ゴルフのスタイル」も多様化している中「伝統を守るため」という

R&AとUSGAの決定は、ゴルフ自体の裾野を狭めているようにも感じます。

R&AとUSGAの思惑では、使用者が減ると思われた「アンカリング」によって、

A・スコットが「マスターズ」を制したことについて、

プレーオフで敗れたA・カブレラは「アンカリングにアドバンテージなんかない。

有利だってことが分かっているとしたら、なんで全員が使わないんだ?」と、

禁止への動きに疑問を投げかけています。

 

今大会は、左胸に「UNIQLO」のロゴをあしらったアダム・スコットの

ポロシャツ姿が、世界中に配信されました。

4月1日に同選手と複数年のスポンサー契約を結んだばかりの

カジュアル衣料大手、ファーストリテイリングは「いきなり大変な宣伝効果が上がった」と

驚きと、喜びのコメントを寄せています。

ゴルフ好きの柳井正会長兼社長ですがゴルフウェア進出というより

「ユニクロ」の世界戦略を担う「ブランドアンバサダー」という契約ということです。

ユニクロのウェアを着てプレーするほか、A・スコットが手掛けている

途上国の教育支援など社会貢献活動にも共同で取り組むとこが発表されています。

同社はテニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチや

錦織圭とも同じ契約を結んでいますが、カジュアルウェアを試合で着用することになっています。

A・スコットが最終日着用したのは、ユニクロのドライカラーポロシャツ(1,990円)と

インナーにエアリズム(990円)、ドライノータックパンツ(2,990円)とベルト(1,990円)と、

合計7,960円の「勝負服」で優勝賞金144万ドル(1億3,680万円)の栄冠をつかんだことになります。

専門ブランドで高価なものが多いゴルフアパレル業界に、

お手ごろ価格で世界の頂点に立ったA・スコットの活躍は、

多くのゴルファーに影響を与えることになりそうです。

 

「マスターズ」前にシーズン3勝してパッティングも好調だったということで、

優勝候補だったタイガーは60台のスコアを1度も出す事ができずに4日間を終えました。

4日間のバーディの数は優勝したアダム・スコッと同じ15個でしたが、

タイガーにとって唯一のトリプルボギーが響いたともいえるでしょう。

これは3日目のスタート前に2ペナルティを課せられてのトリプルボギーでした。

前日2日目、タイガーは15番パー5でボギーを叩いたのですが、

池に入れた直後の第5打のボールをドロップした場所がルールに抵触し

「誤所からのプレー」で、同ホールはトリプルボギーとなり、

「71」だったスコアは「73」に訂正されたのです。しかし本来、

スコア提出後のペナルティ発覚は、過少申告等による「失格処分」の対象となるはずです。

前日タイガーが15番ホールを終えた直後より、

テレビ視聴者からの「ドロップする位置が間違っている」という指摘の声が

マスターズ委員会に寄せられていました。

しかし競技委員が映像を確認したところ、

打ち直しの地点は「問題無し」という判断を下し、

タイガーにはペナルティを加えられる可能性があることを伝えなかったといいます。

ところがラウンド後のインタビューでタイガーが「風が強いと感じたので、

2ヤード下がって打ち直した」とコメントしています。

しかしこれはタイガーが“ボールをカップに近づけたい意思”を持って、

本来ドロップすべき地点よりも後ろから打ち直したという

「誤った処置」をしたことを、自ら認めてしまってことになります。

3日目のスタート前タイガーは、競技委員と協議し自身の過ちを認めたのですが、

マスターズ委員会は競技委員が一旦「問題無し」と判断し、

スコア提出前のタイガーに「ペナルティの可能性がある」という情報を伝えなかったことで、

選手に不利益をもたらしたということで「委員会の自由裁量権」を適用し、

失格ではなく、当該ホール2罰打をつける処分とし「失格処分」については

「議題にならなかった」ということでした。

 

2011年の「アブダビHSBC選手権」でパドレイグ・ハリントンは、

グリーン上でボールマークを取った直後、わずかにボールに手が触れていたことが、

テレビ視聴者からの指摘で明らかになったことがあります。

動いたのはわずかディンプル数個分ということでしたが、

当時のルールでは「失格処分」となりました。

しかし、テレビに登場しやすい有力選手の方が指摘を受ける“危険性”が高まるため、

公平性を欠くという観点などから、委員会の自由裁量権によって、

これまでの「失格処分」ではなく、罰打を加えて、プレーを続行させるというルール

「委員会の自由裁量権」が生まれたのです。

しかし“違反に気付かなかった”のと“ルールを分かっていなかった”のは別問題です。

タイガーの場合“ルールを分かっていなかった”と指摘されても仕方がない状況です。

2日目には14歳のアマチュア、グァン・ティンランが予選通過カットライン上での戦い続ける中、

17番ホールでスロープレーの処分を受け、1罰打を加えられています。

彼に対しては厳格な裁定が下されたことも受け「なぜタイガーはいいのか?」という

反論も広がっています。

今回の一件は、タイガーのミスから始まった騒動であることは疑い様がありません。

放送や通信技術が進み、人気選手は大変でしょうが過ちを認めた以上、

タイガーであっても「失格処分」を下すべきだったと思いますし、

タイガーが自主的に失格を望むべきだったと思います。

 

「特別推薦」で出場の石川は、初日を1アンダーの23位タイと久しぶりに好スタートでした。

しかし2日目は前半から我慢のゴルフでした。強い風が上空を駆け抜ける中、

出だしの1番から1メートルのパーパットを外してボギー発進。

5番でティショットを右に曲げ、3オン2パットとして2つ目のボギーを叩くという悪い流れでした。

「朝の雨でグリーンが軟らかく、タッチが合わなかった。パットが打てなくなって、

特に上りのラインのイメージが出なかった」と、後半を迎えても1メートルから2メートルの

パーパットを外す苦しい内容でした。

傾斜に負けて、カップの前でボールが「垂れる」状態で

決めなくてはいけないパットを外していました。

分かっていても打ちきれないのは、高速グリーンのイメージが強く残る

「オーガスタのグリーン」だからこそですが、

予選カットラインが決まらず視線は宙を泳いでいる様でした。

 

結局石川は、首位から10打差以内という規定で

「最低限、絶対クリアしないといけないライン。何も始まらないと思っていた」と語っていた

「予選通過」を何とか果たしたのですが、問題視された「推薦出場」が故の

プレッシャーとの戦いもあったことでしょう。

ホールアウトから2時間、パッティンググリーンで練習している中の

「予選通過」確定でしたが、石川の表情は安堵感で溢れ、

週末を戦える喜びをかみしめているようでした。

予選2日間の内容はショットに関しては上々の出来で「あとはパットだけ」と口にし

「明日はビッグスコアをもちろん狙うし、それを感じさせるプレーをしないと話にならない。

予感させるようなゴルフをしなきゃいけないと思う」と、

決勝ラウンドの2日間に臨んだのですが、

迎えた3日目は3番、4番で連続ボギーを叩く苦しい立ち上がりでした。

しかし8番パー5では見せ場を作ります

「アゲインストで285ヤードくらいはピンまで必要だった」というセカンドを、

3ウッドで50センチにつけて、2011年大会最終日2番ホール以来のイーグルを奪取。

ここから波に乗るかに思われたのですが、

9番ではファーストパットが傾斜に乗ってカップを8メートルオーバーしてボギーとしてしまいます。

後半も2つのバーディを奪ったものの、上がり5ホールで4つのボギーを叩き

ズルズルとスコアを落としてしまいました。

「金曜日と土曜日では全然違った。フェアウェイが硬くてボールが転がるけど、

その分ピンポジションもショートアイアンで打てないと厳しい位置にあった」と、

この日は予選ラウンドに比べてショットが乱れ、狙いどころは判っていても

思い通りに攻めることができず、課題のパッティングも終盤は2メートル前後を

ことごとく外しボギーを連発。

ホールアウト後は「全然ゴルフになってなかった」と力なく語っていました。

 

最終日を56位タイからスタートした石川は、雨が降り始める前に18ホールを完走し、

7バーディ、1ボギー、1ダブルボギーの好内容で回り、

5回目の出場にして自身初の60台となる「68」をマークし、

通算4オーバーの38位タイに浮上して4日間を終えました。

1番でチップインバーディスタートの後、9・10番で連続バーディと伸ばして迎えた

アーメンコーナーの12番パー3、打った瞬間に手を放してしまうスイングで、

グリーン手前のエッジに落ちたボールは池に消えてしましました。

3打目をピン奥5メートルに乗せたものの、下りのパット決め切れずダブルボギーと

流れが潰えたかに思えました。

しかし13番パー5では2打目を奥3メートルにつけ、

イーグルは逃したもののナイスバーディを奪い、

14番パー4もワンピンから決め、15番パー5はセカンドをグリーン奥のエッジに運び、

そこから寄せて3連続バーディとします。1

7番は第2打をグリーンの奥にこぼしてボギーとしたものの、

18番でピン奥4メートルからバーディパットをねじ込む「ナイスフィニッシュ」となりました。

 

優勝したA・スコットは4日間14バーディ・5ボギーでしたが、

石川は1イーグル・13バーディ・1ダブルボギー・16ボギーと

バーディ数は互角でした。

しかしスコアを落とした原因は3パットや2m以内のパ-パットを外した結果で、

上位進出のためのキーワードはやはり「パッティング」です。

石川は「これから、このコースのことをより考えながら練習すると思う。

ここで通用するショットならどこでも通用する」と語っていますが、

シーズン中盤戦に向けて、そして将来への「ターニングポイント」となる

貴重な4日間だったように思います。

まだまだ不安定でしょうが、石川の可能性を再確認できた「マスターズ」でした。

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