12月1日バンコクライフコラム
体が硬くなる50歳代から飛距離が落ちて、60歳、70歳となってくると、
関節や筋肉の可動域が一段と狭くなり、からだの土台となる下半身、
とりわけ腿などが細くなってきます。
下半身から生み出すパワーが落ち、スイングアークも小さくなって、
ヘッドスピードも出なくなるというのが普通の考え方です。
しかし飛ばなくなる理由は、体力の低下だけではない場合も多いものです。
クラブヘッドを通じてボールにパワーを与えて飛ばすには、
合理性のあるスイングが必要ですが「飛ばなくなった」と力み、
自分では力を感じているのにボールに伝わらないという
「効率の悪いスイング」になっているゴルファーも多いものです。
スイングとクラブで飛距離を伸ばす方法を説明します。
「アイアンが飛ばない」場合は「ヘッドスピードが足りない」か
「インパクトの質が悪い」ことが考えられます。
インパクトの質が悪いと言うのは
スウィートスポットに当たっていないと言うことだけではありません。
高く上がるだけでボールスピードが無い場合は、
スイングの最下点がボールの手前になっている状態です。
最下点を過ぎてボールに当たるとインパクトロフトが増えることになります。
7番アイアンが30度に設定されているアイアンの場合、
最下点を過ぎてボールに当たるとロフトは35度以上に増えてしまうわけです。
7番アイアンで打っているのに、インパクトロフトは
8番とか9番のロフトで打っていることになります。
ゴルフを始めた段階で「ボールを上げよう」として、
すくい打ちを覚えてしまった場合、本来のロフトが生かされずに、
番手間の距離があまり変わらないということになります。
プロゴルファーのインパクトは、
インパクトでシャフトがターゲットよりに傾く
ハンドファーストになっています。
ハンドファーストのインパクトは7番の30度を、
6番の27度に近づける状態になります。
練習で覚えるにはPWを左手一本で持ち、
ハーフスイングでボールを打つと習得できます。
ボールは真ん中で体重は6割程度左足に乗せ、
脇を固めてインパクトで左手甲に張りが出るようにし、
フォローは腰の辺りで止めてください。
インパクトの感覚が分かると思います。
また左足下がりの状態を作って打つのも効果があります。
深いターフを取るようなイメージも良くありません。
アイアンはターフが取れるものだと思っている人にありがちですが、
インパクトでヘッドをボールにぶつける打ち方の人は、
ロングアイアンになるほど、ロフト通りの高さが出せずに、
番手毎の距離をきっちり打てない傾向があります。
ターフは意図的に取るものではなく、自然に取れるものです。
プロはごく自然にターフが取れているのです。
スイングのタイプによって、インパクトイメージを変えることで、
番手毎の距離を打ち分けられるようになります。
体を使ってスイングできるタイプの人は、
ショートアイアンではターフを取るイメージで振ってもいいですが、
軌道がフラットになるロングアイアンでは
逆にターフを取ろうとしないことがポイントになります。
最近話題になっている飛び系アイアンですが、
7番アイアンのロフトが「26度」あるいはそれ以下という
超ストロングロフトの“激飛び系”アイアンが発売されています。
しかしアイアンはそもそも飛ばすクラブではありません。
激飛びアイアンを使うことで、スコアは良くなるのかは分かりませんが。
ゴルファーに幸せをもたらしてくれるのは間違いありません。
日本を代表するアマチュア向けのアイアンといえば
ダンロップの「ゼクシオ」です。
2000年に発売された初代ゼクシオの
7番アイアンのロフトは「32度」でした。
ロフト角とはクラブフェースの傾斜角のことで、
アイアンの場合、この数字が小さくなるほど飛距離性能は高くなります。
2014年に“プラス2番手の飛び”を売り文句に大ヒットとなったのは、
ヤマハの「インプレスUD+2」でした。
7番アイアンのロフトはなんと「26度」でした。
一般に、アイアンの番手ごとのロフト差は3~4度とされるので、
ゼクシオと比べると1.5~2番手ほどロフトが立っている計算になります。
激飛び系アイアンの登場に「それは、5番アイアンに
7番アイアンっていう刻印をしてあるだけでしょ」という反論も出ましたが、
プロも使用するヤマハのアイアン「RMX116ツアーモデル」の
5番アイアンと「UD+2(2016モデル)」の7番アイアンを比較すると、
RMX116ツアーモデルは(5番)ロフト27度 長さ37.75インチで、
UD+2(7番)はロフト26度、長さ37.5インチと、
ロフトの“逆転現象”が起きていました。
ちなみにツアーモデルの7番のスペックは、
ロフト34度と、長さ36.75インチで、ロフトが8度立ち、
0.75インチ長いというスペックでした。
激飛び系アイアンの問題点は
ショートアイアンのセッティングにあります。
7番で26度のUD+2のピッチングウェッジ(PW)のロフトは38度。
ツアーモデルのPWのロフトは46度と8度も違います。
スッポリ2番手分の“空き”が生まれてしまっているのです。
ツアーモデルのPWは46度で、次に52度のウェッジを入れるとすると、
6度のロフトピッチが生じ58度のサンドを入れるか、
もしくはPW・50・56・ロブウェッジと4本のウェッジを
入れるのが主流になってきています。
しかし激飛び系アイアンの場合、4本でも足りません。
38度のPWの次は、43度のAWを入れ、
そこからはたとえば単品ウェッジの47度、52度、56度
といったようにセッティングの、
ウェッジ5本体制にするしかないのです。
プロゴルファーは数ヤード単位でシビアに縦の距離感を
コントロールしたいので、激飛びアイアンは
逆に「難しいクラブ」になります。
ロフトが立つことで低い弾道になり、
グリーンに止まらない可能性がありますが、
ミドルアイアンを低重心のモデルにして
上がりやすいシャフトと組み合わせれば、
高弾道になりスピン性能も上がります。
私の工房では、ミドルアイアンは低重心のフルキャビティの鍛造で、
ショートアイアンはハーフキャビティの鍛造と、
タイプの違う鍛造を組み合わせることで対応しています。
興味がある方はご連絡ください。
11月1日バンコクライフコラム
国内メジャー「日本オープン」から予選落ちが続いている石川遼。
ショットが安定せず、結果が出せない状態が続いています。
練習場ではドライバーも含め調子の悪さは感じないのですが、
コースに出ると長めのクラブのコントロールに苦戦をしています。
石川が「癖」と言っているのはインパクトで手元が浮いてしまう動きです。
これは振り遅れによるもので、長いクラブでヘッドが戻りきらず
フェースが開いたままインパクトを迎え、プッシュアウトのミスになります。
技術力の高いプロほどダウンスウィング中にそれを嫌がり、
アジャストしようと手でヘッドを返す動きが入り引っ掛けも出てしまいます。
長い番手で左右のミスが出る石川はこの状態にあります。
「手元が浮く要因は股関節の使い方にあると思うんです。
僕は股関節の使い方が下手。
”股関節が入る”とか”股関節に乗る”という表現をよく聞きますが、
そういった感覚がないんです」と語っています。
私が思うにはダウンスイングで右かかとの上がりが早く、
低く押し込むことができないので、
股関節のイメージができないのだと思います。
重心が浮くことでクラブが振り遅れ、
前傾角が伸び上がって手元が浮いている様に思います。
PGAツアーの入れ替え戦に挑んだ頃のスイングは、
前傾角を保ち良い状態に向っていました。
石川は今シーズンの初めにこの手元が浮く癖を修正するべく、
持ち球をドローからフェードに変えるスウィング改造に着手しましたが、
帰国後は右からドローを打とうとして
そのままプッシュアウトという振り遅れが目立っています。
1970年台の後半から1980年代の前半に自らも
「どん底」を経験したジャンボ尾崎が、
たまりかねて石川にアドバイスをしたそうです。
スタート前の練習場で、ツアー通算94勝を誇るジャンボから
「ドライバーを打ってみろ」といきなり言われ
「ジャンボさんの目に、今の自分のスイングが
どういう風に見えているのか知りたい」と思い、
練習の1発目からドライバーを打ったところ、
「トップからダウンスイングに入るところの間がないな」と
指摘されたそうです。
ラウンド中も、ジャンボから教えられた
インパクトからフォローにつながる素振りを繰り返したていました。
「自然と間が作れるような理想のインパクトからのフォローを意識」しながら
プレーしたということですが、ドライバー、アイアンともに
右に行く球が多く2日間のフェアウェイキープ率は
32・14パーセント(出場96人中86位)、
パーオン率は55.56パーセント(同80位タイ)と、
石川の不調を数字が物語っています。
「基本中の基本を教えてもらった感じ。
間がないことが(プッシュアウトが出る)原因だったことが分かって、
気持ち的に楽になった」と語っていましたが、結果は出ませんでした。
試行錯誤を重ねる中で、適切な動きのイメージが
つかめなくなってしまったのかもしれません。
打つ前にいろいろな動きをして、
実際にその動きに重ねようとしていますが、
上半身と下半身のバランスや、
タイミングが合わないとボールは曲がってしまいます。
PGAツアーのプレーヤーとは体格が違うので、
敵うはずもないのに知らず知らずのうちに飛距離を求め、
ヘッドスピードを上げてしまう状態になり、
自分のスイングスピードのコントロールを失って、
PGAツアーから撤退した日本人プレーヤーも多くいました。
石川のアプローチショットやリカバリーショットを打つ時の
「イメージ作り」には素晴らしいセンスを感じます。
イメージすればそこに打っていける高い技術を、
持っているのは間違いありません。
15歳の時に優勝しスター街道を歩いてきた石川です。
「みなさんの期待に応えられない葛藤はあるが、
目先の予選通過というか、OBを避けて予選通過を最優先する時期じゃない。
今後の5年、10年を考えると、今取り組まないといけないと思ってやっている。
数ホールずつだが手応えを感じられるホールが増えている」とコメントしています。
良い部分があるのに、短所を消すことばかり考えているように思います。
戦ってきたステージが違い、
きっかけがあればいきなり今週優勝ということになっても私は驚きません。
腰の故障などにより戦列を離れているタイガー・ウッズが、
11月30日からバハマで行われる
「ヒーローワールドチャレンジ」で復帰することが決まりました。
同大会はPGAツアーのポイント、賞金ランキングには加算されないツアー外競技。
世界ランキング上位者を中心としたトップ選手18人が出場し、
前年は松山英樹が優勝しています。
タイガーは「ヒーローワールドチャレンジで
競技ゴルフに復帰できることに興奮している。
アルバニーは完ぺきなセッティングが施され、
この傑出したフィールドに加われることは何より素晴らしい」と、
大会関係者およびファンに感謝のコメントを残しています。
タイガーは前年大会で1年4カ月ぶりに競技に復帰しましたが、
今年2月の欧州ツアー「オメガ・ドバイデザートクラシック」で
腰痛を再発させて途中棄権。4月に自身4度目となる腰の手術を受け、
リハビリと治療に励んでいました。
9月末の「ザ・プレジデンツカップ」で米国選抜の
副キャプテンとして公の場に現れた際には、
最悪のケースとして競技に復帰しない可能性も否定していませんでした。
プライベートでは5月末に自宅のあるフロリダ州の路上で、
飲酒(または薬物)運転容疑により逮捕され、
その後釈放されています。
タイガーは「飲酒ではない。処方薬により予期せぬ反応が起きた」としながら、
パームビーチの裁判所で無謀運転により有罪となり、
1年間の保護観察処分を受けています。
PGAツアー賞金王に10度輝き、
メジャー通算14勝をあげたゴルフ界のスーパースターですが、
最後の賞金王は年間16試合で5勝を挙げた2013年でした。
8月末には「医者から小技練習を開始してもいいという許可が出た」
ということで、タイガー自身がチップショットを打つ動画をツイッターで披露。
10月にはアイアンショットやドライバーショットの動画を公開しています。
フロリダ州ジュピターの自宅近くのメダリストCCと
カリフォルニア州ロサンゼルスの名門ロサンゼルスCCで練習ラウンドを重ね
「王者タイガー」が戦いの場へ戻ってきます。